ぼくがやきものを作りたいと思ったのは学生時代の後半頃のことでリーチさんや古い英国のスリップウェアを見て泥で描いたその線の表情に大変心惹かれたからでした。 そんなわけで自由に作業させてもらえる陶芸教室を見つけてそこでさっそくスリップウェアの試作を始めましたがその頃はまだ現物を手にしたこともなくただ美術館でガラス越しに見たことがあるのといくつかの写真を見るだけで、柳宗悦や濱田庄司が書いている文章を頼りにあれこれ試行錯誤していたのです。 土を揉むことも満足に出来なかった頃のことですからかたちを作るのはもちろんのこと、陶芸入門の本を読むだけの知識では2色の泥の扱いや釉薬のことにも苦心したのは当然のことでした。 学校を出たあとは京都の府立の専門校で一年間轆轤を学びながら、そしてその後の立杭での弟子時分は他のやきものにも関心を拡げながらスリップウェアの試作は少しづつ続けていました。 1998年に生畑で独立後の初窯を焚いた時からしばらくはまだまだわからないことも多かったのですが、ようやく全力で取り組み始めて原料の扱いなど技術的にも一応の目処が立ったのが2000年頃でした。 そして2003年のはじめてのスリップウェアだけでの個展をきっかけにひと窯全部スリップウェアを焼いたのです。 この時の窯は幸い全体がなかなかきれいな焼け上がりで、中でもかたちはほぼ英国の古いものと同じですが本歌とは違う信楽土の緋色や灰釉の表情、そしてよほど太い線で描いた紋様などが気に入ったこの鉢はもちろんその個展にも出し、またその後も何度かの機会に展示しましたが大きさもあるもののためか手元に残っておりました。 このブログの開設以来アイコンに使っているのもこの鉢ですがこれをご覧になった方から問い合わせをいただき、このたび納めさせていただくことになりましたのでこれを機会に改めてここに紹介したいと思いました。
by slipware
| 2011-05-18 10:39
| slipware
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