三彩といえば普通は有名な唐三彩のように黄色や緑の華やかな色釉を用いたものを指しますが、自分はかたちした地土の上に他の色の泥で紋様を付けて焼締めたものを泥三彩と呼んでいます。これは特に色を目当てに調合したものではなく、ただ天然の泥そのままの色なので多少紋様が賑やかになっても全体の調子は渋くおさまるというのが気にいっているのです。 この場合紋様は筆ではなく指で描いています。この指描の方法を見つけたのはふとしたきっかけです。それは自分がまだ丹波立杭の師のもとで修行させていただいていた頃のことです。いくつも並んだたくさんの器に化粧掛けをしていました。指に泥が付いたままでは滑って作業ははかどりません。そこで雑巾などで手を拭えばいいのですが、あるとき指に付いた泥を次に掛ける器の横腹になすりつけながら作業をしていたのです。指の跡がついてもすぐにたっぷりと化粧で覆われて消えてしまう訳ですから問題ありません。 未だ乾かない土の上を濡れた指が心地よく滑ります。そこには何とも伸びやかな指の跡が残されます。案外このへんに模様の発生の起源があるやもしれません。そういうやきものの仕事の工程から捕まえたやり方は土や泥の生理からしても無理がないものです。 東京駒場の日本民藝館に自分の大好きな江戸末期くらいの丹波のものでやはり二色の泥を使った火消し壺があります。土肌に違う色の土で装飾するということは丹波でも古くから行われていたのです。それはおそらく指ではなく筆を使っているという気がしますが、その壺からヒントを得てこの紋様を用いています。自分の場合は二本の指に色の違う泥を付けてあまり考えないで一気に仕上げています。
by slipware
| 2004-12-21 21:29
| 泥三彩
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