スリップウェアの場合は型作りのものがほとんどですがカップなどの轆轤で作るものに関しても割合たっぷりと厚みを残して柔らかいかたちに仕上げたいという気があります。 スリップウェアに使っている土が比較的砂っぽいざっくりとしたものであまりぴしっと薄く仕上げるのには向かない上に、さらに化粧土を掛けて釉薬を掛けて装飾するわけですからなおさらフォルムは緩くなるのです。 ぼく自身はスリップウェアというやきものには紋様装飾も含めてそういうゆったりとしたおおらかなものを求めているのでしょう。 いっぽう須恵器のかたちはそうではありません。 古代の須恵器はそうシャープなものばかりでもなくわりに柔らかい雰囲気の造型も見られますがあくまで自分の場合の話しです。 こういう無釉のやきものは轆轤したままの仕上げがそのままに焼けて固まります。 こちらはなるべく手をかけないで自分の感覚で押さえこみすぎずにかたちを作りたい。 轆轤の上でびゅんと伸ばして簡単に済ませたかたちは長時間の高熱で熔けて小さく焼け締まりながら折り合いをつけます。 時には高熱が過ぎてかたちが崩れたり、傾いたり、薪に押されたりして隣のものとくっついたりもします。 しかしそうして仕上がることで最初の轆轤の上での味気ないくらいのものも自然な姿に戻されるのだという気がします。 写真は先の六寸と同じような七寸の平鉢ですが積み重ねて焼いた高温の窯の中で上下のものとくっついて大きくかたちが歪んだものです。 くっついたうつわにはくっつた痕跡が残り、くっついたものならではのかたちに出来上がってきますがこれはこういうものとしてそのまま受け取りたいと思うのです。 昨今は陶器のようなものも完全品であることが求められすぎるような気がしてならないのですが、本来陶器とはそういう事とは折り合いが悪いものではないかとも思うのです。 むろん江戸、明治、大正、昭和と技術は革新され続け工業製品の登場でなおさら完成度の高いものが手仕事にも求められる土壌ができました。 きゅうりでも大根でも真っ直ぐで大きさの揃ったものが求められるという、現代はそういう時代なのです。 ところがそういう過程で抜け落ちたものがあるには違いないのです。 魚は広い海を泳ぎまわっている、大根は土に突き刺さっている、陶器とはもともとこういうものであるというそういうあたりまえのことを発信してゆくのもぼくたちの大切な役割には違いないと思うのです。 もちろん養殖の魚、工場の中で水耕栽培で作るトマト、タイマーをセットして電気窯で焼いた陶器を否定するわけではありません。 そちらにはそちらの価値と論理があるでしょう。 手仕事は手仕事として本来の性を取り戻してゆきたいものだと願っております。
by slipware
| 2011-01-20 16:31
| 須恵
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