先日の写真の割れたうつわは六寸と七寸の平鉢でしたが大丈夫なものもありました。 自然釉の表面が荒れる問題についてあれこれ考えているのですが、古い須恵器を見れば釉薬が剥落したものが相当数あることがわかります。 もちろん今ぼくたちが見ることが出来る古代の須恵器のほぼすべては数百年から千年以上も土中に埋もれていたものが発掘されたものではあり、そのことによって釉表面が土中のアルカリ分などで侵食されて風化した結果剥落したのだという可能性も考えられなくはないのですが、むしろこれらは出来上がった当初からなめらかな釉調ではなかったのではないかという気も相当程度しています。 釉が綺麗に残っているものもたくさんあるにはありますが、残ってはいても今うちの窯で焼け上がってくるように煮えた様な荒れた肌のものもかなり確認できるのです。 剥落してしまって当初の釉の状態が確認できないものも含めると相当の割合で須恵器の自然釉は荒れた釉肌をしていたのではないかと想像しています。 いっぽう若干窯の構造と焚き方が異なる12世紀末以後の常滑、丹波、信楽などのやきものにはこういう釉肌のものはほとんど無いように思うのです。 このあたりに何か自然釉の状態を考えるヒントがあるような気はします。 ぼくの小さな窯でさえひと窯焚けばなめらかな釉のものと荒れた釉のものが出来上がります。 薪に近いところと煙突に近いところ、熱が上がる場所と比較的上がらない場所などそういう焼成条件の違いは小さな窯だけに差が少なく、その条件と結果との関連が今のところまったく掴めないので困るのですが、自分の窯焚きが釉肌が荒れやすい条件に近いところで行われているのだということは現実なのです。 いろんなものが出来るということは少しの条件が変われば結果は変わる境目にあるのかもしれないとは思っています。 確かめるべきは薪の種類、焼成温度、昇温の速さ、還元の濃度、強還元のタイミングです。 コントロールしにくい条件としては窯に影響のある地面からや雨などによる湿度の問題、冷却の速さなどの影響も考えられます。 今のところ自分の予想では強還元のガスの過多によるものか、単純に高温すぎて煮えているだけなのか、あるいはもしかしたら広葉樹の雑木類の自然釉というのがアルカリ分も多くてこのようになりやすいということなのか、原因はそのあたりではないかと思うのです。 まずは次回はどのタイミングで釉薬が煮えるのか、強還元前の段階で釉調はどうなっているのかということを確かめたいと思います。 それには窯の最終段階でいくつかのものを引き出してみれば良いのです。 これでなめらかな釉調が得られているとすればそれが荒れる原因は強還元から冷却の間の条件にあると言って良いと思うのです。 こういうことは高熱に耐えるカメラで焼成から冷却までをモニター出来れば訳はないのですが、どこかそういう設備のある大学なり何なりで取り組んで欲しいものだと思います。
by slipware
| 2011-01-20 04:39
| 須恵
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