彫紋色差 花盒子 1995年秋 h:65mm w:77×65mm
今でも大好きながらほとんどそういうものは今の自分の仕事の表には出てきませんがやきものをはじめた最初の頃は琉球の彫紋に色を差した古い壺屋のやきものに大変魅かれていたのです。
丹波立杭で師の元にいた頃はそれで英国のスリップウェアや朝鮮の粉引のものと並んでそういうものもいろいろと実験と試作をしていました。
師匠の仕事を学びながら、夕方からは自分の好きなやきものの勉強をさせて下さっていたのです。
弟子時分の最後の窯焚きに入れていただいたこの盒子は壺屋と同じく白掛した素地を釘彫りした上に呉洲と鉄とで色を差しています。(壺屋はあるいは鉄ではなくマンガンかもしれません)
蓋には鉄泥で花の文字をスリップウェアの要領で書いていますがこういう筒描き文字はどちらかといえば丹波式で壺屋には無いやり方かも知れません。
こんな技法も上手くこなせればなかなか楽しいものが出来そうで、こういう琉球風のものを独立後にも一度かなりの数をまとめて作ったことがあるのですが、どうにも幼稚な出来映えに嫌気がして全てを打ち割ってしまいました。
先日戸棚の中からすっかり忘れていたこの盒子を見つけて、今ではかなり距離感のあるこういうものだからこそ懐かしいような気持ちとともにまたしてみたいような気がしました。